緑内障とは
緑内障とは、眼圧によって視神経が障害され、視野が狭くなる・視力が落ちてしまう病気です。日本の失明原因の第1位になっています。
緑内障は大きく、開放隅角緑内障と閉塞隅角緑内障に分けられます。隅角とは、房水(眼の中を満たす液体)の排出口のことです。
隅角が開いている「開放隅角緑内障」の場合は点眼薬による治療から開始しますが、隅角が狭い・閉じている「閉塞隅角緑内障」の場合には、レーザーや手術による治療が必要になることが多くなります。
緑内障の治療方法
緑内障は、適切な治療を行えば、その進行を押しとどめたり、遅らせたりすることのできる病気です。しかし、一度障害された視神経を回復させることはできません。
失明を回避するためには、適切な治療を早期に開始することが重要になります。
薬物療法
多くの場合、まずは薬物療法から開始します。
緑内障のタイプ、進行の程度、眼圧に応じた点眼薬を処方いたしますが、効果が低いと判断した場合には点眼薬の種類を変更します。
眼圧を下げる飲み薬を処方することもあります。
いずれの場合も、すぐに効果が実感できるものではありませんので、根気よく継続することが大切です。
レーザー治療
虹彩に孔(あな)をあけて房水の流れを良くしたり、線維柱帯に照射して房水の排出を促すことを目的としたレーザー治療があります。
レーザー治療は、外来で受けていただけます。
手術
薬物療法、レーザー治療で十分な効果が得られない場合には、手術を検討します。
房水が眼外へと排出されるようにする手術、線維柱帯を切開し房水の排出を促す手術などがあります。
緑内障手術は年々改良が加えられ、以前と比べると成績も良くなっています。ただし、いずれの手術もあくまで緑内障の進行を食い止めるためのものであることをご承知おきください。視力や視野が回復するというものではありません。
点眼の方法
- まずは石鹸で手をよく洗い、水分をしっかり拭き取ってください。
- 容器を持っていないほうの指の腹で下まぶたを軽く下に引きます
- 容器の先端がまつ毛や瞼に触れないよう、1滴、点眼します。
- 点眼後は、優しく眼を閉じて、涙嚢部(目頭のやや下で鼻寄り)を圧迫します。
- 目からあふれた点眼薬は、ティッシュや清潔なタオルで拭き取ります。
- 手に点眼薬が付着した場合は、水で洗い流します。
※2種類以上の点眼薬を使用する場合には、5分以上の間隔をあけるようにしてください。
上記の方法でうまくいかない場合はげんこつ法をためしてみてください。
- 片手でげんこつを作ります。
- げんこつを下まぶたに当て軽く下にひきます。
- げんこつに点眼容器を持つ手をのせ、一滴点眼します。
レーザー治療の種類
LI(レーザー虹彩切開術)
隅角が狭い,または閉塞している緑内障に対して、急性緑内障発作の予防のために行うレーザー治療です。
虹彩に小さな孔をあけ房水の流れを改善することで、急性緑内障発作の予防を図ります。所要時間は5~10分程度で、痛みもほとんどありません。
ただし長期的には水疱性角膜症といって、角膜が濁って視力が低下する合併症が知られています。その治療には角膜移植が必要です。
一方で白内障手術により急性緑内障発作の発生を予防することが可能です。そのため最近ではLIではなく、白内障手術を選択することが多くなっています。
ALT(アルゴンレーザー
線維柱帯形成術)
隅角が開いている開放隅角緑内障に対して行うレーザー治療です。
隅角にレーザーを照射し、線維柱帯の色素細胞を焼くことで流出抵抗を減らし、房水の排水を促して眼圧を下げます。5~10分程度の外来処置として可能ですが、照射した部位は線維柱帯の組織が破壊されるため、複数回の処置が難しいというデメリットがあります。
MLT(マイクロパルス
線維柱帯形成術)
原発開放隅角緑内障に対して行われるレーザー治療です。
ALT(レーザー線維柱帯形成術)後に眼圧が再度上昇してしまった場合、再度のALTは前回照射した部位とは別の部位に行う必要があります。
これに対して、当院で行うMLT(マイクロパルス線維柱帯形成術)は線維柱帯の色素細胞を破壊しません。
治療後に眼圧が再度上昇した場合も、何度でも同じ部位に照射して眼圧の降下を図ることができるというメリットがあります。
LGP(レーザー隅角
形成術)
虹彩周辺部にレーザーを照射して凝固させるレーザー治療です。主に瞳孔ブロックのないプラトー虹彩緑内障、隅角が狭い原発開放隅角緑内障に対して実施されます。虹彩周辺部の収縮を促進することで隅角が開き、房水の流れが改善します。
緑内障手術の種類
これまでの緑内障手術は、点眼治療をしても眼圧が十分に下降しない場合などに、いわば最終手段として行うものでした。
しかし手術技術と医療機器の進歩によって、目や身体への負担が少ない緑内障手術が開発されました。当院では、この低侵襲緑内障手術を実施しています。
低侵襲緑内障手術は、白内障手術と同時に行うことも可能です。
線維柱帯切開術
(眼内法)
隅角部にある線維柱帯を非常に繊細なフックで切開することにより、房水が排出されやすくすることで眼圧を下げる効果が期待できます。
線維柱帯切開術(眼内法)は保険適応であり、白内障手術と同時に行う場合、約10分の追加時間で行えるのが特徴です。
線維柱帯切除術
(EX-PRESSアルコン®
エクスプレス®緑内障
フィルトレーション
デバイス挿入術)
従来の線維柱帯切除術では、線維柱帯や虹彩を切除し、前房と結膜下組織の間に房水の流出路を作成します。房水を眼外に逃すことで、眼圧を下降させる効果が期待できます。
一方、エキスプレスインプラントを用いると線維柱帯や虹彩を切除する必要がなくなり、線維柱帯切除術をより安全に行うことが出来ます。
従来の線維柱帯切除術よりも低侵襲で術後合併症も少ない傾向にあるため、当院の線維柱帯切除術はエキスプレスインプラントを用いて行なっています。
ただ、眼圧下降効果は従来法の方が大きいため、より低眼圧を目指す必要がある場合は従来の線維柱帯切除術が向いている方もおられます。
よくあるご質問
点眼薬で眼圧が
下がらなかったら
どうなりますか?
点眼薬の追加や変更でも眼圧が下がらない場合には、レーザー治療や手術が検討されます。
これまでは、まず緑内障の種類や程度に応じて、適切なレーザー治療を行い、それでも眼圧が高い場合などに、手術を行っていました。しかし、手術技術の向上や手術機器の進歩により、より低侵襲で手術が行えるようになったため、今では、より早い段階で手術を行うことが可能となっています。
緑内障で
失明しますか?
その場合、
回復できますか?
残念ながら、治療をせずに放置していた場合、失明することがあります。一度障害された神経を再生させることはできません。つまり、緑内障が原因で障害された視力や視野を回復させることは困難です。
ただ、早期に適切な治療を開始すれば、過剰に失明を心配する必要はありません。緑内障のリスクが高くなる40代から、無症状であっても定期的に検査や健康診断を受け、早期発見に努めましょう。
緑内障は初期なら
治りますか?
緑内障の治療で視力や視野が元に戻る、つまり「緑内障が治る」ということはありません。それは初期であっても同じです。薬物療法(主に点眼治療)、レーザー治療、手術のいずれについても、緑内障の進行を食い止める・遅らせることが目的となります。だからこそ早期に発見し、進行させないことが重要です。
緑内障のレーザー治療は痛いですか?
当院で行なっているレーザー治療は、痛みは非常に少ないか、あるいはチクチクする程度の痛みですので安心してご相談ください。
なお手術についても、局所麻酔をかけるため、痛みはほとんどありません。