中途失明原因の上位である「糖尿病網膜症」とは
糖尿病網膜症は、血糖値が慢性的に高くなる「糖尿病」に合併する目の病気です。神経症、腎症とともに、糖尿病の三大合併症に数えられます。
糖尿病になると、網膜の血流が低下したり、閉塞することで網膜への栄養・酸素供給が不十分になり、網膜に新生血管が出来ます。新生血管が壊れて硝子体出血や眼底出血を起こすと、視力が低下します。網膜の血管がもろくなり、網膜が腫れる(黄斑浮腫)ことでも視力は低下します。
糖尿病網膜症は、国内では中途失明原因の第二位の病気です。
糖尿病になって何年で
発症する?
個人差はありますが、糖尿病発症後、数年から10年以上が経過すると網膜症を合併するケースが多くなります。糖尿病自体の治療にしっかりと取り組むことが、糖尿病網膜症の合併リスクを下げることにつながります。
失明者数
糖尿病患者のうち、約140万人が糖尿病網膜症にかかっていると推定され、そのうち、年間3000人が失明しています。
糖尿病網膜症は初期症状に乏しいこともあるため、糖尿病の診断後は症状の有無に関係なく、定期的に眼科で検査を受けてることが大切になります。
糖尿病網膜症の症状・見え方
糖尿病網膜症は、その進行の程度に応じて症状が異なります。
初期、中期、末期に分けて、それぞれの時期に見られる症状をご紹介します。
初期
(単純糖尿病網膜症)
初期には、ほとんど自覚症状がありません。定期的な検査を受けていれば、この段階でも発見が可能です。
網膜の黄斑部に浮腫が生じた場合には視力低下を起こすこともありますが、通常は軽微なものに留まります。
中期
(増殖前糖尿病網膜症)
黄斑浮腫に伴う視力低下が現れやすい時期です。ただし、中期に至っても自覚症状がまったくないということもあります。
この段階では、網膜の血管が詰まり初めていますが、詰まっている範囲は限られています。
末期
(増殖糖尿病網膜症)
網膜の広い範囲で血管がつまり、新生血管が生じて、硝子体出血を起こします。硝子体出血を起こした場合には、視力低下が急激に進行します。網膜剥離を伴う場合には、視力低下に加えて視野障害も認められます。
末期には視力低下が現れやすいのですが、硝子体出血や黄斑浮腫が無い場合には視力が正常であるため、病気の進行に気がつきません。たまたま眼底検査をした時には、すでに末期の状態で見つかることがあります。
放置していると、失明のリスクが高くなります。
検査方法
一般検査
(視力・眼圧・屈折)
糖尿病網膜症は進行すると視力が低下します。視力が低下しているにも関わらず、気がつかないことがありますので視力検査は重要です。
細隙灯顕微鏡検査
主に角膜、結膜など眼球の前方部分を観察する検査です。特殊なレンズを用いると硝子体や網膜などの深い部分まで観察することも可能です。
眼底検査
網膜の血管や視神経など、眼底を中心に観察する検査です。
光干渉断層計(OCT)
網膜、脈絡膜の断面図を撮影し、その状態を評価します。特に黄斑浮腫などの診断に有効性を発揮します。
糖尿病網膜症の治療方法
血糖コントロール
糖尿病網膜症は、糖尿病の合併症です。治療にあたっては、内科での糖尿病の治療が非常に重要です。内科医師の指示に従い、血糖値のコントロールに努める必要があります。
レーザー光凝固術
当院では、レーザーの出力や照射時間を適切にコントロールすることで、患者さんの痛みが少なくなるように配慮しています。
硝子体手術
網膜剥離や硝子体出血を起こすほど進行している場合や、レーザー光凝固術で十分な効果が得られなかった場合には、硝子体手術を行います。
硝子体の出血や増殖組織を取り除いたり、剥離した網膜を復位させたりといった処置を行います。眼科領域でも高度な手術ですが、当院では日帰りでの硝子体手術に対応しています。
抗VEGF療法
黄斑浮腫につながるVEGF(血管内皮増殖因子)の働きを抑制する抗VEGF薬を眼内に注射します。黄斑浮腫を改善する効果があり、視力回復も期待できます。